以前は、コンプライアンス=法令遵守、と定義され、法律や社則を守っていればよい、という認識がありました。
しかし、もはや「法令」という枠組みにはとらわれず、「社会規範やモラルに合致して」いることが求められる時代になっています。
それはなぜなのでしょうか。
SNSによる情報流出のリスク
そのような変化の要因の一つには、SNSの普及を上げることができます。
これまでは、新聞やテレビなどメディアから発信される情報によって、私たちは社会の出来事を認知していました。
実のところ、メディアからの情報は、政治や経済に大きな影響を与えるため、コントロールされており、時に情報の一部しか報道されず、不利益を被ることがないよう何かが守られていたりします。
しかし、SNSの普及により、一市民、一社員、学生や若者たちまでもが、手軽に情報発信を行える時代になると、情報をコントロールすることは難しくなりました。
その結果、一社員が、「これはおかしい」と感じていること、また組織ぐるみで隠ぺいや虚偽記載が行われてきたことを知ってはいたものの、徐々に心が苦しくなりSNSを使って内部告発に至る・・・というようなケースをしばしば耳にするようになりました。
今までなら、会社の上層部に訴えても、握りつぶされてしまったものが、外部へ、いとも簡単に発信することができるようになったのです。
これは、ある場合、膿を出すには仕方のない方法であったとしても、企業としては、一度の情報流出により信頼が急速に失われ、経済的に大きな損失を被ることは避けられませんし、その企業と関わりある多数の人の生活に直接影響を及ぼすこともあります。
法律の枠組みを超えた社会規範
本来、このようなことになる前に、会社としてクリーンであるべきことはもちろんですが、その「クリーン」の基準は、法律や社則だけでよいわけではありません。
利益優先の考え方を盾にすると、多少のごまかしや不正、厳しい労働環境を放置することは大したことではない、と考えてしまいがちです。
しかし、もっと重要な点は、人として、また一般的に受け入れられている価値観や倫理観からしてどう判断されるか、という観点で考えない限り、「クリーン」ではいられなくなってしまいます。つまり、それこそが「社会規範」と言えます。
社会規範とは、ブリタニカ国際大百科事典(小項目辞典)の解説によると、
「社会や集団の中で、ある事項に関して成員たちに期待されている意見、態度、行動の型のこと。その社会に広がる価値体系が成員に内在化されたもので、成員の遵守行為によって顕在化する。」と述べられています。
社会に「期待されている意見、態度、行動の型」を守ることは、法律や社則の枠組みをはるかに超えるものとなります。なぜなら、大抵の決まり事というのは、問題が発生してから検討され、再発防止のために、新たな規則や法律が出来上がってきます。
予測できることはあらかじめ法に盛り込まれたとしても「想定外」のことに、法律は対応しきれません。
特に、変化のスピードが加速していく現代、法律の整備が追いつかないのは致し方ないことです。
さらに、一人一人が自分の意見を世に発信できる時代に、「法律に違反してないんだから問題ない」などと言って逃げきれないことは多々あります。
ですから、最初から、法や規則の枠組みを超えて、一般社会に浸透している価値観、人としての倫理観に基づいて一人一人が行動していれば、大きなコンプライアンス違反が生じることは無くなります。
会社のリーダーとして行えること
この点で、会社や企業のトップが示す姿勢が重要なのは言うまでもありません。
トップが自分の私腹を肥やすために自ら不正に手を染めているようでは、その下の組織がぐらつかないわけはありません。嘘には嘘で塗り固めていくことが必要になるからです。
そのような体制はいつかは崩壊してしまうことになります。
まずは、一人一人が自分の胸に手を当て、誰かに後ろ指さされてしまうような仕事をしていないか、考えてみるのは良い事です。大きな組織を変えることには時間を要しますが、まず、自分の意識を高く持ってみること、ここから意識改革をするなら、大きな組織を良い意味で変えていくことも夢ではないはずです。
勇気は必要ですが、利益追及だけでなく、それが最も会社のためになること、そのサービスを利用しているお客様のためになることを忘れずに、努力し続ける価値を信じていけるようでありたいものです。
◆関連する記事:「コンプライアンスとは」
◆関連するブログ記事:「自社の当たり前、世間とのズレ」ほか