職場でのハラスメントの現状

厚生労働省が公表した「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、民事上の個別労働紛争の相談件数では、「いじめ・嫌がらせ」が72,067件、6年連続でトップとなっています。(図1)
これからも右肩上がりになることが予想され、対策はまだまだ追いついていないのが現状です。

図1 民事上の個別労働紛争の相談内容の件数の推移
「平成29年度個別労働紛争解決制度施行状況」(厚生労働省)

何か対策をしなければ、とは思っているけど、どこから始めたら良いか分からない、とりあえず形としては対策してみたけど、イマイチ効果は感じられない、と頭を悩ませておられる管理職の方も多いのではないでしょうか。

対策を考えることも大切ですが、まずは、ハラスメントの原因を探ってみましょう。
ハラスメント対策のヒントが見えてきます。

 

ハラスメントの原因

パワーハラスメントの定義では、
「職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に」起こる、とされています。
つまり、この「優位性」または、人を「優位」と思わせるものが、ハラスメントの一因と言えます。

 

2種類の「職場内での優位性」

1、上司と部下、先輩や後輩と言った文字通りの上下関係

明らかな肩書きや役職があり、「立場」が誰かより「上」と位置づけられている場合。
組織が存在する以上、一定の秩序を保つためには、役職や肩書きは必要です。
そのような「優位性」は、本来正しく機能すれば、仕事を効率的で生産的に行い、職場をまとめ、良い雰囲気作りを行い、働きやすい職場環境を作り上げる力を持っています。
ただ、この「優位」な立場を勘違いしてしまい、思い通りに事が運ばない時に、立場を誤用するとハラスメントが起きてくることになります。
放置すると、部下への必要以上の叱責、人格を否定する、著しい暴言を吐く、長期間無視する、というような、身体的、精神的苦痛を与えてしまうことがあります。

2、個人の潜在的な意識の問題

人はそれぞれ、育った環境や教育的な背景の違いゆえに、異なった価値観を持っています。
そのため、見方や考え方が異なっていても不思議はありません。その「相違」は、決して「優劣」ではないのですが、自分の価値観で勝手に「優劣」をつけてしまっていることがあり、さらに悪いことに、そのことに気づいていない場合も多いのです。
職場において、特別な役職名や肩書きがないとしても、専門知識の量や有無、年齢、性別、出身地、出身校、学歴、国籍、宗教、財産、社会的身分、障害の有無などを理由に、「優劣」を作ってしまう事があります。

これらは、自分さえ気づかない潜在的な意識の中で、特定のイメージを持っている場合があり、それが無意識の発言や行動に表れてくるのです。
例えば、「あの人は、〇〇出身だから」「〇〇人は信用できない」「男のくせに」など、人を勝手ながらカテゴライズしてしまい、同調する人たちと「そうそう!」と盛り上がってしまったような経験はないでしょうか?誰しも少しは心当たりがあるはずです。
そうした言葉は、ある人にとっては、「嫌がらせ」と感じさせてしまう危険が十分にあります。

言い換えると、心の奥底にある無意識の感情や偏見が、「あの人には勝てないけど、あの人よりは上」というように、自分を順位付けしてしまうことが、ハラスメントを生み出すもう一つの原因となります。自分が「優位」と判断した相手に対してのみ、まるで「私はあなたより上です!」と言わんばかりに圧力を加え、嫌がらせへと発展してしまう事があるのです。

 

ハラスメント対策は、自分の順位ではなく、お互いの良いところを見つけるところから

人には、肩書きの有無や背景に関わらず、憲法で保証された基本的人権があります。
その個々の人権を尊重する気持ちは本当に大切です。相手が誰であっても、自分にはない良い資質や能力、個性を持っているからです。
もし、良さを一つも見つけられないとしたら、問題は相手にあるのではなく、自分自身にあるのです。相手の良さが全く見えなくなってしまうほど、自分の立場に視界が曇らされているのかもしれません。

お互いの良いところを発見していくのは、まるで宝探しのようです。一緒に意志を通わせながら、仕事を成し遂げていく過程で、お互いへの理解を深め、良いところをザクザク発見していきます。すると、心から尊敬でき、日常の言動にはその敬意が自然と表れてくるものです。

職場の一人一人に心を開いていくことは、地道な作業であり、エネルギーを要しますが、努力する価値のある事であり、ハラスメントへの対策ともなります。
よりよく相手のことを知ることができると、内心は「ちょっと嫌だ、苦手だ」と思っていた相手と、驚くほど親しくなれることさえあるからです。
そうなれば、自分にとっても、財産が二倍になったようなものです。本当の意味で、皆が知りあう努力を払うなら、ハラスメントなど生まれる余地はありません。お互いの財産を何倍にも増やすことができ、楽しみながら、職場で働く個々の従業員に、理解や感謝の気持ちを持って、円滑に仕事を行うことができます。
そのような関係が構築された職場は、「個性の違い」があっても、嫌な「優位性」を感じさせることはありません。皆がそれぞれの「立場」を尊重し、笑顔で働くことができ、活気に満ちています。
仕事から充実感を味わうことができ、仕事への意欲やエネルギーもますます湧いてくるものです。

本当の意味で、職場からハラスメントをなくしていくための特効薬のようなものはなく、地道で継続的な努力が求められます。フローや形を整えることも大切ですが、それと同時に、個々の従業員一人一人がお互いとどう向き合うべきか、についての心の教育も忘れたくはありません。

ハートリレーションズは、働く人の心と心をつなぎます。

 

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